「忙しいからというのは言い訳で、実はもうパロディしかできなくなっているのです」。今年の年賀状を前にして、和田家の父親はそう激白した。数年前からオリジナリティのあるデザインでの年賀状づくりを目指してきた和田家だが、結局今年も実現できず、道のりは相当険しいようだ。もっとも母親はごく普通の年賀状を希望しており、「市民本位のまちづくり」ならぬ「受取手本位の年賀状づくり」と意気込む父親に対し、家族がさほど熱くなっていないのは毎年のことだ。さて、今年の年賀状。取りかかったのは12月23日のことである。「あれこれと意見を言う時期ではない」と近年になく年賀状づくりに協力的だった母親の姿が切羽詰まった状況を物語っていた。ビートルズのアルバムタイトル「A Hard Day's Night」と「A Happy New Year」の出だしの3文字が同じで、文字数も近いことに気付いた時、すべてが決まった。当初、アルバムジャケットのようにいろんな表情の写真を載せるつもりだったが、どうせなら小さい頃からの写真を載せると楽しいのではないかと思うに至った模様。実はこの作業が困難を極め、年末の大掃除時期だというのにあれでもないこれでもないとアルバムを引っくり返すのだから、和田家は力を入れることろが違う。スキャナーで取り込み、ひとつひとつ切り抜く作業は大変だったようだが、オリジナル同様切り抜きの精度はさほど追求していない。白黒に変換した後の色合いに統一感を出す作業には気を使っているが、髪の色の違いでもわかるとおり完成度はさほど高くない。これに関してはもともとの写真の明暗度合いが異なるため補正には限界があったとする見方が強い。「完成した年賀状は結果的に楽しいものとなり、パロディとしてもまずまずの出来ではないか」と父親は評価している。パロディ路線に対して開き直りともとれるこの発言からして、オリジナル年賀状の発表はまだまだ先のこととなりそうだ。しかしこの年賀状をビートルズアルバムのパロディだと指摘した人はおらず、多くの人がオリジナルのデザインだと思っているであろうことは皮肉としか言いようがない。
※これはトピックスで紹介しているものを転記したものです。
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